小児重症患者の広域搬送の実態調査

国内で、ジェット機を必要とするような広域搬送を必要とするような、小児期(18歳未満)の重症患者がどれくらいいるかを、日本小児総合医療施設協議会と日本小児循環器学会で調査しました

2017年から2022年6月までの5年半に、①実際に固定翼機(民間旅客用航空機、医療用ジェット、航空機動衛生隊など:プロペラ機、ジェット機両方)で搬送した小児、可能であれば医学的等の理由で固定翼機が望ましかったが、②ヘリコプターで搬送した小児、及び③陸路で搬送した小児の経験について、両会に所属する全国医師にアンケート調査を行った。前二者①②を合わせて空路搬送、後一者③を陸路搬送として解析しました。

固定翼機の搬送を必要とした理由については、①超重症患者の搬送、②地元への後方搬送(back transfer)、③帰省搬送、➃移植時のレシピエントの搬送の4つに分類して調査しました。

この5年半に固定翼機の搬送を必要であると判断された小児は225例(毎年40例)でした。男女差はあまりなく、0歳児23例、6歳未満57例でした。

搬送された小児患者の基礎疾患は、心疾患が最も多く170例(76%)で、次に肺・気道疾患(8%)、血液疾患(3%)で多岐にわたっていました。

広域搬送となった理由を調べると、超重症患者の搬送が113例(50%)、紹介元への後方搬送58例(26%)でした。

実際の搬送方法は、固定翼機とヘリコプターを合わせた空路搬送が160例(71%)で、本当なら空路搬送が望ましいと思われる小児患者で66例(29%)が陸路搬送になっていました。

搬送元・先のどちらかが、北海道、南九州・沖縄であった例とその他の例が、どのように搬送されたかを調べました。搬送元・先のどちらかが北海道だった患者は合計120例(53%)でそのうち93例(78%)が空路搬送で、実数まで把握できていませんが、そのほとんどが北海道航空医療ネットワーク研究会(HAMN)による医療用ジェット機(メディカルウィング)による搬送でした。南九州・沖縄だった患者は64例(28%)でそのうち51例(80%)で、実数まで把握できていませんが、医療用ジェット機の例はほとんどなく、航空機動衛生隊、民間旅客機か、ヘリコプターでした。一方、その他の地域は43例(19%)で、27例(63%)が陸路搬送でした。その他の地域では新幹線が搬送に使用できること、医療用ジェットのシステムがないため、やむなく陸路搬送になった例が多かったものと考えられます。

搬送の理由を見ますと、空路搬送患者のうち、超重症患者搬送の患児が99例(68%)で、超重症患者搬送113例のうち、99例(88%)が空路搬送されていました。一方、後方搬送は、空路搬送患者の12%しかなく、後方搬送患児の76%が陸路搬送になっていました。後方搬送とは言え、まだ全身状態の落ち着いていない小児が長い時間をかけて陸路で紹介元に搬送されていることが明らかになりました。患者が陸路に耐えられるようになるまでは紹介元に戻れないということは、それだけ長く高度医療施設のベッドを占拠していることになりますし、家族もより長い間遠方での生活を強いられていることになります。また。陸路やヘリコプターでの搬送では家族は同伴できませんので、搬送中の患児の不安も大きなものとなると思います。