我が国でも重症呼吸・循環不全に対する集学的治療の進歩は著しく、大動脈バルーンポンピング(IABP)、Extracorporeal Membrane Oxygenator (ECMO)、補助人工心臓(VAD)[経皮的補助人工心臓(IMPELLA)を含む]などの機械的循環補助を含む集学的治療の、救命率や治療後の予後・QOLは著しく向上しました。しかし、このような治療は大都市に限定され、それらの地域以外の重症呼吸・循環不全患者は、高度な専門的治療を受けられないのが、我が国の現状です。特に小児の重症呼吸・循環不全患者において、これらの集学的治療を受けられるのは、さらにごく一部の大都市に限られています。また、新型コロナウイルス感染症の蔓延を経験し、現状のままでは、新興ウイルス感染症が地域で感染拡大するとその地域の医療崩壊を招くことも明らかになりました。
このような現状で、重症呼吸・循環不全患者が国内で公平に医療を受けるためには、人工呼吸器や上述のECMOをはじめとする機械的循環補助を装着した患者を、地域から高度医療施設に空路で搬送するための医療技術を開発するとともに、広域医療搬送を可能にするようなネットワークを構築することが、喫緊の課題と思います。また、引き続いて医療が必要な場合には、紹介元へのback transferまで考えたネットワークを作ることが、患者と家族のQOLを考慮した治療体系であると考えます。
そこでこのたび、重症患者の迅速な搬送・治療に繋げる「救命のための予防線」となるような日本重症患者ジェット機搬送ネットワーク(Japan Critical Care Jet Network:略称JCCN)の設立を目指して、重症患者の治療に関わる医療界関係者が中心になって、法曹界、行政、運航事業者と連携できるような特定非営利活動法人を設立いたしました。
以下の4つの事業を行う方針です